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2022.06.09

【獣医師 三井からのメッセージ】外科のハードルを越えていくために重要なことは「命を救う」強い意志

あなたはどんな獣医師になりたいですか?

動物の命を救う獣医師を目指そうとしたときに、まず思い浮かべる姿は「外科手術中の姿」ではないでしょうか。

基礎系出身の私は、小動物の臨床をはじめた当初から、外科という分野に高いハードルを感じていました。

新人の頃は「手術とは院長や中堅の先生が行うものである」という意識のもと、緊迫した空気の中で術前管理や麻酔中の管理、術後管理と、無事に覚醒するまで気の抜けない仕事の連続で、サポートに徹するのが関の山でした。

一から覚えることも多く、自分が手術を行うようになるまでには膨大な課題が山積みにあることを実感し、将来術者になる姿を想像しようも漠然とした不安に飲まれる日々を送っていました。

とはいえ、外科は「手術でなければ助けられない」という成功時のかけがえのない達成感や、患者さんからの「命を救ってくれた」という感謝の気持ちなど、獣医師冥利に尽きる分野であることはいうまでもありません。

私は日々黙々と愛護団体や地域猫の避妊去勢手術をこなしていたものです。

手術の基本は全て避妊手術にあり」とまで言われているものの、それだけでは手術ができるようになることはありませんでした。

小さな術創から卵巣、子宮を探し、糸で結んで、摘出し縫合をする。
そんな機械的な作業をこなせるようになっただけであり、避妊手術だけでは上達しない事に薄っすら気づきながらも次のステップへの行き方がわからないまま時は流れました。

避妊手術の合併症でみられる卵巣動静脈からの出血は、術創が小さいために起こってしまった時には目視ができません。

出血に対する恐怖も常にあり、克服が難しかったように思います。

当院ではたびたび大きな手術もあり、見学の機会があったものの、それが自分の技術に直結するかと言われたらまた別の話でした。

「難しい手術はベテランの獣医師がするもの」という決め付けと「避妊手術をしていれば他の手術もいずれできるようになる」という誤解が自分の成長を止めていました。

いくら先生の手術の助手に入ったり外科のアトラスを見たりしても、本当の解剖の理解もできていなかったのです。

当たり前かもしれませんが自分が手術をして成功させるという「意志」が常に必要なのです。

今の自分はここまでできればいいかな」という壁を無意識に作ってしまっていては、他の分野の視野も広がらず、すべてがこじんまりした獣医師で終わってしまうように思います。

今でこそ、獣医療も専門分野が細分化され、早い時期からそれぞれの道を目指すケースも増えてきています。

しかし、命を救える獣医師になり、地域に根ざした総合医として頑張っていくには他人のために頑張れる意志が必要なのです。

意志を持って取り組み、挑戦していくことで少しずつスキルアップができ、あなたが理想とする「命を救う獣医師」に近づくことができますよ。