学生向けお役立ち情報

学生時代から考える動物グリーフケア

「グリーフケア」とは

ノア動物病院 院長の林です。

皆さんは“グリーフ”という言葉を聞いたことありますか?
何となく聞いたことがあるという方は、ペットロスの…というイメージでしょうか。

実は、グリーフ(Grief)とはさまざまな“悲嘆”を意味します。
我が子同様にペット(本当はコンパニオンアニマルという言葉を使いたいのですが)を愛すればこそ色々な深い悲しみを体験します。

愛するペットがいつもと違う表情を見せた時…
言葉を話さない彼らを見て、あなたはただただ不安を感じることでしょう。
また、愛するペットが予期せぬ病気を宣告されたり、「治る見込みがない」と告げられたら、どれほど大きなショックを受けるでしょうか?

多くの飼い主様は、その“悲嘆”を1人で抱えて、どうしてよいのか戸惑い、その形や大きさは違っていても、不安や恐怖と闘いながら苦悩の日々を送られています。

海外や日本での取り組み

グリーフケアはアメリカでは早くから注目されている分野です。
カウンセリングなどさまざまな角度から飼い主支援を行うことを言います。

日本では阿部美奈子先生が第一人者で、全国の動物病院で院内セミナーを行ったり、全国でのセミナー開催もしています(近年はZoomセミナー中心です)。

動物・飼い主の心のケアが重要だと考えている動物病院では、グリーフケアにも力を入れています。

グリーフケアは飼い主様が持っている、内側の悲しみや苦しみの感情を吐き出せる環境を作り、その心を受け止め心の支えになります。

愛するペットに最良の治療を施すためには、飼い主様の心のケアが必要です。
飼い主様の心理状態を理解しようと努力し、対応することは獣医師にとってもコミュニケーションの不具合を軽減し、大きな信頼関係にもつながります。

「動物も人も幸せにする動物医療」が求められる

これからの時代は「動物を診る動物医療」から「絆」中心の医療へ変化し、「動物も人も幸せにする動物医療」が求められていきます。

現代の動物医療も進歩し様々な病気の治療が可能となってきました。
早期発見、早期治療などにより延命も期待できます。
そのような大きな喜びを感じる一方で、寿命が長くなることにより向き合わなければならない、さまざまな問題も出てきます。

完治が難しい癌など重い病気になったり、目が見えない、歩行が困難、自力で食べられない…など老化現象や、認知症を患い介護が必要となる場合も少なくありません。

また、治る見込みのない病気の末期で、大きな苦痛を伴う場合には、安楽死の決断を迫られ苦しみ悩むことがあるかもしれません。

「最愛のペットの最期をどのように看取るか」
「どのようなお別れにしたいか」
「延命をしていいのだろうか?」

それらはそれぞれ家族で価値観が違います。
それぞれの家族が一番大事にしたいことはどのようなことなのか?
飼い主様の心の声に耳を傾け、一緒にその大切な命に向き合い、個々の家族のスタイルに合った“良い看取り”に導くことも獣医師の役割です。

学生のうちにグリーフケアを学んでおこう

学生時代にこのグリーフケアの考え方を知り、勉強することはとても重要なことです。
皆さんは、普段の授業(いわゆる獣医学)で手一杯かもしれませんし、まだまだ学校の授業にこの概念を入れているところはほぼないのが現状です。

ただ、これからは取り入れる学校も増えることと思います。
今は、自分でセミナーに申し込んだり、グリーフケアを取り入れている動物病院に話を聞きに行ったり、阿部先生に直接話を聞いたり(めちゃめちゃフレンドリーな先生で、マレーシアに在住しているのでZoomで話をしてくれます)、とさまざまな手段があります。

最後に

特にこれから小動物臨床に進もうと思っているならば、グリーフケアは必須の知識です。
今後AIの発達で、獣医師の価値は以前と比べ、かなり様変わりするでしょう。

治療知識、手術や処置などの技術だけが獣医師の評価につながる時代は終焉します。
いかに動物の尊厳を尊重できるか飼い主の心に寄り添うことができるか、が獣医師の価値になる時代が来ます。
グリーフケアを理解するには時間がかかります。

今すぐ使える飼い主対応が中心ですが、来るべき未来に向けても、ぜひとも学生時代からグリーフケアを学ぶことをお勧めします。